生涯一人か……そんな思いとコロナが引き金になり、60歳を目前に婚活アプリに時間とエネルギーを注ぐことを決心した【石神賢介】
人生の節目〜39、49、59歳は〝婚活発情期〟
◼️彼女はソフトなMだった
40代前半の日系の航空会社の客室乗務員ともマッチングした。彼女は当時の婚活サイトでは珍しく、顔写真を堂々とアップしていた。写真の顔は美しく、明るく笑っている。もちろん即OKして二人で食事をした。
その帰路、タクシーの中で誘われた。
「今日、してもいいよ」
からかわれていると思ったが、本気だった。彼女はアプリを通してすでに10人と会い、相手を気に入ったらベッドで試すらしい。
「そのなかで、私にブスッと刺した男は3人かな」
言っている意味がすぐには理解できなかった。
「だからさあ、アソコにブスッと刺されちゃったって、こ、と」
彼女の表現は個性的で、地頭のよさが感じられた。
ホテルに入ると、誘われた理由が判明した。彼女はM。自分と身体の相性が合うSの男性を探していた。それまで知らなかったが、MにもSにもハードとソフトとがあるらしい。ソフトなMはハードなSのプレイは耐えられない。ハードなMはソフトなSではもの足りない。
彼女はソフトなMで、相手もソフトなS、あるいはSの素質がある男を求めていた。ところが元彼はハードなS。毎回モノを喉の奥まで突っ込まれて、呼吸ができなくなった。窒息するかと思っていた。だからまずベッドで試し、身体の相性がよかったら交際に進むという。
「さんざん清い交際をしてから夜の相性が合わないってわかったら、時間がもったいないでしょ」
彼女はきっぱりと言った。
しかし、筆者は〝不合格〟だった。ノーマルなので、彼女のさまざまなリクエストに対応できなかったのだ。髪を鷲づかみするようなワイルドな攻めは上手にやれず、彼女の指導のもとに試みた言葉攻めも、すごみを出せなかった。
「ごめんね……」
ベッドの上で正座をして頭を下げた。下腹部では〝わが子〟も、申し訳なさそうに頭を下げていた。
彼女とは空が明るくなってきた朝、ホテルの最寄り駅で別れた。